令和元年度衛生工学衛生管理者講習(bグループ)を令和元年11月12日(火)から11月15日(金)まで受講しました。
このbグループの受講資格要件は次のとおりです。
◎第1種衛生管理者免許試験に合格した者(保健師、薬剤師の資格による免許取得者は対象外)
◎学校教育法による大学において保健衛生に関する学科を専攻して卒業した者であって、労働衛生に関する講座又は科目を修めた者
□ 日程

□ 研修会場
中央労働災害防止協会 北海道安全衛生サービスセンター
〒064-0919
札幌市中央区南19条西9丁目2-25

□ オリエンテーション
1 座席:講習期間中指定席
2 配布物:テキスト類は、⓵労働衛生のしおり(令和元年度版)、⓶新衛生管理(上)第1種用、③新・やさしい局排排設計教室、④局所排気・プッシュプル型換気装置及び空気清浄装置の標準設計と保守管理、その他資料等として、カリキュラム、講師一覧、免許試験合格者等のための免許申請書等手続の手引き、アンケート、パンフレット類
3 講習にあたって
①この講習は、法令で各教科の講習時間が定められています。遅刻、途中での退席、一部を欠席すると、試験を受けることができない。
②受付は、初日だけでなく、2日目以降も8:30から行うので、受験票を提示する。
③休憩時間及びその後の開始時刻は、講師の進行により変わるので、その都度知らされる。
④各教科で使用する教材は、その都度知らされる。
4 試験について
①鉛筆又はシャープペンシルと消しゴムを必ず用意すること。労働衛生工学については電卓も使用する。電卓は、携帯電話・男子手帳及びプログラム電卓など文字を記憶できるものは使用できない。
②合格は、受験した科目の合計得点が60%以上かつ、各教科50%以上の得点を得ていることが必要となる。
③この条件に満たない場合は、不合格になる。不合格者には講習終了後おおむね1週間以内に、補講に関する連絡がある。
④合格者の通知については、後日、修了証の送付で通知に替える。合否の問い合わせは受け付けない。
⑤合格者が免許証の交付を受けるためには、配布された手引きを参照して申請を行うこと。不明な点や詳細については、厚生労働省のホームページ、労働局労働基準部健康安全課に問い合わせること。




□ 衛生工学衛生管理者講習のポイント
Ⅰ 職業性疾病
1 職業性疾病とは
■ 職業性疾病:職業病、一定の職業に従事し、その職業上の有害な因子(有害物質・有害エネルギー、有害生物、有害作業要員)ばく露されることによって起きる病気
■ 業務上疾病:労基法第75条に基づき、業務に起因して発生し又は自然経過を超えて増悪した疾病であり、労基法規則別表大の2に列挙される。医学的治療を必要とした場合は、使用者がその療養費をし這わなければならない。
■ 作業関連性疾病:個人的要因や生活習慣に職業上の要因が加わって発生したり、増悪したりした疾病
2 化学的要因と健康障害
(1) じん肺と合併症
アじん肺:ある種の粉じんを吸入することで肺の組織が線維化(組織増殖性変化)する疾患。吸 入された粉じんが肺胞まで到達して沈着すると、人体は異物を排除しようとして炎症が生じ、その周辺の肺組織がすこしずつ破壊される。やがて、その傷口が治ったときの瘢痕と同じように線維化する。じん肺がある程度進行すると、粉じんへのばく露を中止しても肺の線維化が進行する性質がある。
☆ 遊離けい酸によるじん肺=けい肺、炭素によるじん肺=炭素肺・黒鉛肺、石綿によるじん肺=石綿肺、アルミニウムやその化合物によるじん肺=アルミニウム肺、鉄化合物によるじん肺=溶接工肺
イ けい肺:遊離へい酸(二酸化ケイ素)は肺の線維化が強く起こる。
■隧道工事、坑内作業、鋳物業の砂型作業、石材加工、ガラス工業など
■繊維化した組織が大きくなるとけい肺結節と呼ばれ、エックス線で粒状影として映るようになる。
ウ 石綿肺
■石綿(アスベスト)を吸引することによる
■石綿は直径0.02~0.2μmの繊維状鉱物で、絶縁性・耐熱性・対腐食性に優れ、加工しやすい。
■有害性(発がん性):クロシドライト(青石綿)>クリソタイル(白石綿)>アモサイト(茶 石綿)
■エックス線写真で不整形陰影、胸膜肥厚斑(プラーク)、胸膜石灰化、胸水など
■合併症:胸膜中皮種・肺がん
■石綿0.1%を超えて含まれる製品の製造・使用禁止
エ じん肺合併症:
①肺結核
②結核性胸膜炎
③続発性気管支炎
④続発性気管支拡張症
⑤続発性気胸
⑥原発性肺がん
(2) 有害物による健康障害
ア 金属
(a)鉛(無機・有機)⇒鉛中毒予防規則
用途:電池、合金、合成樹脂、塗料、(半田、おしろい)
吸収:粉じん・ヒュームの吸入、粉じんの経口摂取
症状:貧血、腹痛(鉛疝痛)、末梢神経障害、僥骨神経麻痺(伸筋麻痺で下垂手)、腎障害、生殖障害
体内:骨等に蓄積され、生物学的半減期は全体で5年、骨で10年
生物学的モニタリング:血中鉛・尿中デルタアミノレブリン酸・赤血球中プロトポルフィリン 測定
四アルキル鉛 ⇒四アルキル鉛中毒予防規則
用途:燃料に添加するアンチノック剤 ⇒ ベンゼンやトルエンなどに代替された
揮発性・脂溶性が高いため、呼吸器・皮膚からの吸収されやすい。
症状:頭痛・不眠・不安 ⇒ 錯乱・けいれん・昏睡 ⇒ 死亡
(b)クロム
用途: 金 合金、金属加工、皮なめし、触媒
吸収:ヒューム・粉じんとして吸入
六価クロム(クロム酸・重クロム酸)には発がん性
症状:(皮膚)発疹・小潰瘍、(鼻)鼻中隔穿孔、(癌)肺・上気道
規制:特定化学物質障害予防規則の管理第類物質、鉱石から製造する事業場では特別管理物質
(c)マンガン
用途:電池、鉄鋼の脱酸脱硫剤、合金、ガラス着色など
吸収:ヒューム・粉じんとして吸入
症状:肺炎、精神症状、歩行障害、発語障害、パーキンソンニズム
体内:脳に沈着
規制:特定化学物質障害予防規則の管理第2類物質
(d)水銀
①金属水銀
用途:温度計、圧力計、歯科用アマルガム、(乾電池)
常温で液体で蒸発しやすく、吸入により肺から入る。消化管からは吸収されない。
症状:(急性)肺炎・口内炎 (慢性・脳)精神症状(感情不安定・判断力低下・幻覚)・ 手指ふるえ
②無機水銀
用途:分析・有機合成の触媒
吸収:気道と消火器から吸収
症状:(腎)血尿・蛋白尿
③アルキル水銀化合物
用途:試薬・(種子消毒・防腐剤・抗白 剤
症状:(慢性・脳)求心性視野狭窄、視覚障害、運動失調、胎児影響、水俣病
(e)カドミウム
用途:電池・ 金・半導体
吸収:ヒューム・粉じんの吸収と消化管からの吸収
体内:肝・腎に蓄積、生物学的半減期:数十年
症状:(急性)肺炎・上気道炎 (慢性)腎障害、肺気腫、肺がん、黄色環腎障害で尿中に低分子蛋白の出現カルシウムの尿中排泄が増えて、骨軟化症
イ 有機溶剤
特徴:1) 揮発性が高い ⇒肺から吸収されやすい
2) 上記比重が空気より重い ⇒拡散しにくく、通気不十分な場所(地下室・ビット・貯槽等)に停留しやすい
3) すべて脂溶性脂溶性が大きいほど、脳や神経・脂肪に移行しやすい両親媒性(水溶性・脂溶性ともにある)のあるものは特に皮膚粘膜から吸収されや すい
4) 引火性、但しハロゲン化炭化水素には難燃性で消火剤として使用されるものあり
用途:溶解、希釈、脱脂洗浄、抽出、殺虫剤
共通の症状:(脳)頭痛・めまい・物忘れ・不眠 (皮膚・粘膜)結膜炎・湿疹・皮膚角化亀 裂(呼吸器)咳・上気道炎(高濃度)麻酔・意識障害(ハロゲン化されたもの)肝障害
規制:有機溶剤中毒予防規則(健診)半年ごと一部の対象有機溶剤においては、生物学的モニタリングとして有機溶剤代謝物測定 あり,発がんの恐れのある有機溶剤10物質は特定化学物質障害予防規則の管理第2類物質の特別有機溶剤等・特別管理物質。但し、健診等の有機溶剤中毒予防規則の 規定は一部準用される。
発がんの恐れのある有機溶剤10物質:①クロロホルム、⓶四塩化炭素、③1,4-ジオキサン、 ④1,2-ジクロロエタン、⑤スチレン、⑥ジクロロメタン、⑦1,1,2,1-テトラクロロエタン、⑧テトラクロロ エチレン、⑨トリクロロエチレン、⑩メチルイソブチルケトン
(a)ノルマルヘキサン
用途:触媒・接着剤
吸収:肺・皮膚
体内:代謝されて2,5-ヘキサンジオンとなり、生物学的モニタリングの指標となる
症状:多発性神経炎(抹消神経障害)
(b)ハロゲン化炭化水素
①四塩化炭素
用途:(消火剤・フロンの原料)
吸収:蒸気を肺から吸収
症状:強い肝障害、腎障害
②ジクロロメタン(塩化メチレン)
用途:金属部品の脱脂洗浄
症状:(慢性)肝障害 ⇒胆管がん
(c)メタノール
特徴:水溶性で脂溶性
用途:接着剤・農薬・塗料・合成樹脂・合成繊維・医薬品等の減量
症状:(低濃度でも長期ばく露すると)視神経障害・失明
(d)二硫化炭素
用途:セロハン・レーヨンの製造
吸収:肺・皮膚
症状:(高濃度急性)精神障害 (低濃度長期)動脈硬化の進行、微細動脈瘤で脳卒中・虚血性 患のリスク 網膜細動脈瘤
規制:有機溶剤中毒予防規則の第1種有機溶剤
ウ 窒素性ガス
(a)一酸化炭素
特徴:空気とほぼ同じ重さ。無色・無臭・無刺激。不完全燃焼で発生。ヘモグロビンへの親和性が酸素の約250倍あり、血液の酸素運搬障害を生じる。
用途:製鉄
症状:息切れ・頭痛・判断力低下・意識障害 ⇒死亡 (急性中毒治療後)脳委縮による健忘や運動機能障害
規則:事務所衛生基準規則で空気調和設備を設けている場合の供給気中濃度供給気中濃度10ppm 以下 事務室の濃度50ppm以下
エ その他
(a)ダイオキシン類
化学物質の合成や廃棄物の焼却の副産物
ポリ塩化ジベンンゾーパラージオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンンゾフラン(PCDF)、コプラナ ーPCBの総称
2,3,7,8-TCDD(四塩化ベンゾジーパラージオキシン)が最も毒性が高い
発がん性物・生殖毒性
吸収:経皮・経気道
(b)芳香族ニトロ化合物(ニトロベンゼン、ニトロクロルベンゼンなど)・芳香族アミノ化合物(ア ニリン、ナフチルアミン、ベンジジン、オルトートリジンなど)
用途:薬品・染料の原料
吸収:肺・皮膚
症状:赤血球のヘモグロビンをメトヘモグロビンに変化させる ⇒酸素運搬能力の低下 ⇒チアノ ーゼ・貧血、肝障害(ベンジン、ベーターナフチルアミン、4-ニトロジフェル、膀胱がん
(c)ニトログリコール
用途:ダイナマイト原料
吸収:肺・皮膚
症状:末梢血管拡張により、頭痛・めまい・血圧低下
平日取扱い業務に従事する週末に狭心症様発作
規制:特定化学物質障害予防規則の管理第類物質
(d)塩化ビニル
用途:合成樹脂、衣料、インテリア、(エアロゾル)
症状:(高濃度)麻酔 (低濃度)レイノー症状、指端骨溶解、皮膚効果、肝障害、肝血管肉腫
規制:特定化学物質障害予防規則の特定第2類物質・特別管理物質
(e)ホルムアルデヒド
用途:接着剤、塗料の原料、防腐剤 ⇒建材から放出されてシックハウス症候群の原因物質の一つ
症状:粘膜刺激作用(咳・上気道炎・流涙)、接触性皮膚炎、鼻咽頭がん
規制:特定化学物質障害予防規則の特定第2類物質・特別管理物質
(3) 酸素欠乏症
酸素欠乏:空気中の酸素濃度が18%未満の状態(酸素欠乏症等防止規則) 救助での二次災害の報告が多い。
酸素欠乏危険のある場所:生物による酸素消費
金属の酸化(船倉、下水講、タンク、サイロ、樽の内側)
症状:酸素6%以下の空気を吸った場合、一呼吸で意識を消失して失神し、死亡する。同じ酸素欠乏状態でも、身体負担が大きい作業をしていた場合、心疾患・肺疾患・貧血や喫煙習慣がある作業者は症状が重くなりやすい。
規則:酸素欠乏症等防止規則
作業前に作業主任が必ず作業場所の酸素濃度を測定し、酸素濃度に応じた必要な対策をとる。
3 物理的要因と健康障害
(1) 温熱環境による健康障害
ア 高温による障害
熱中症:高温環境下で労働すると体温は上昇し、体温を調節する脳の中枢が働き、皮膚の血管の拡張、発汗増加で対処しようとするが、高温がその調節機能を超えたり、調節中枢の変調が生じたりして、生命の危険を伴う状態の総称。
(a)熱失神:発汗による脱水などのために循環血液量が減少し、脳に血液を十分に送ることができず、一時的な脳虚血による立ち眩みを起こす。
(b)熱虚脱:さらに血圧が低下して代償的に脈が速くなり強い全身倦怠感と脱力感をともなうもの。
(c)熱けいれん:大量の発汗があり、水のみを補給した場合に血液の塩 分濃度が低下して、四肢や腹筋に痛みをともなったけいれん(こむらがえり)、立ち眩み(数秒)を起こす。
(d)熱疲労:更に発汗が続いて、体内の塩分や水分が失われ、ショックを起こす。顔面が蒼白で皮膚は汗で湿る。体温の異常はなく、全身倦怠感、脱力感、めまい、吐き気、頭痛など
(e)熱射病:熱調節中枢の機能の変調によるもので発汗が停止し、体温は40度以上となり、意識障害やうわごとをいうようになる。生命にかかわる。
イ 低温による障害
(a)低体温症:体の中心部温度は35度以下
体温が32度以下になる中枢神経機能・呼吸・循環機能の障害を起こして死亡する。
(b)凍傷:低温環境下で手足などの末梢血管収縮が起こり、血流障害によって指足などが壊死する。
(c)凍瘡:しもやけ
Ⅱ 労働衛生工学に関する知識(作業環境に関する基礎知識)
1 労働安全衛生マネジメントとリスクマネジメント
ア 労働安全衛生マネジメントシステムの導入
・経営との一体化
・本質安全化への取組み
・自主的な対応の推進
・安全衛生水準の向上
イ リスクアセスメントとは
A リスクアセスメントは以下の手順で実施する。
① 労働者の就業に係る危険性又は有害性特定
② 特定された危険性又は有害性ごとのリスクの見積もり
③ 見積もりに基づくリスクを低減するための優先度の設定及びリスク低減措置の内容の検討
④ 優先度に対応したリスク低減措置の実施
B リスクアセスメントの進め方については厚生労働省より次の指針が示されている。
① 危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成18年3月)
② 化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年9月)
③ 機械の包括的な安全基準に関する指針(平成19年7月)
2 一般作業環境
ア 温熱環境
温度感覚を左右する環境条件は、気温、湿度、気流、輻射(放射)熱の4つの要素によって決まる。
表3-2事務室の環境管理(事務所則より)の中の「空気環境」のホルムアルデヒドの基準は、室の建築、大規模の修繕、大規模の模様替えを行った場合は、当該室の使用を開始した日後最初に到来する6月から9月までの期間に1回測定すること。
気温、湿度、気流、輻射熱の温熱要素で、温熱環境が決まってくるが、この温熱条件を評価するためには、要素一つずつ測定することが一般的であり、それを統合して一つの尺度WBGT(湿球黒球温度)で温熱条件を表すことができる。
WBGTは、労働環境において作業者が受ける暑熱環境による熱ストレスの評価を行う簡便な指標である。暑熱環境を評価する場合には、気温に加え、湿度、気流、輻射熱を考慮して総合的に評価する必要であり、WBGTはこれらの基本的温熱諸要素を総合したものになっており、WBGTの値は次の式で産出される。
イ 空気環境及び換気
気積は設備の占める容積及び床面から4mを超える高さにある空間を除き、作業者1人についき10㎥以上としなければならない。
(例) 気積の計算(高さ4mに注意)
縦:横:高さ=15m:6m:9mの部屋に、貯蔵庫(縦:横:高さ=5m:2m:3m)
がある場合に、定員の計算はどいうなるか?
部屋の4mまでの容積 15×6×4=360(㎥)
貯蔵庫(デッドスペース) 5×2×3=30(㎥)
部屋の有効気積 360-30=330(㎥)
最大定員数 330÷10=33(人)
ウ 視環境
室内の彩色についてじゃ、彩度(色の鮮やかさの尺度。無彩色は白、黒など)の高い色彩は交感神経の緊張を招きやすいので、長時間にわたる場合は疲労を招きやすい。また、明度(色の明るさ。高い城は白、低い色は黒。)の高い色彩は光の反射率が高いことから照度を上げる効果があり、目より上方の壁や天井は明るい色を用いる。一方、目の高さ以下は、まぶしさを防ぎ安定感を出すため、濁色(白と黒を元の色に混ぜたくすんだ色)を用いるとよい。
長時間滞在する室内での作業において疲労を避けるためには、壁、天井、ブラインド、机、椅子、事務機器などの色調は調和の取れたものを採用することが望ましい。なお、視覚障害者への配慮についても留意する必要がある。
エ 音環境
音の大きさは、音圧レベル(Lp)で表され、その単位はデシベル(dB)で表す。音の高さは周波数で表され、その単位はヘルツ(Hz)で表す。音圧レベルは、通常、人が聞くことができる最も小さな音圧に対する比の常用対数を20倍して求められる。
Lp=20log(p/p₀)
P:ある音の音圧(単位はμPa)、P₀:基準音圧(20μPa)
実際の音圧レベルは刻々変化するが、それが仮に一定の音圧レベルであったとしたとき、
ある時間内に伝わった音のエネルギーが等しくなるような音圧レベルのことを等価騒音レベルという。一般的に騒音は時間とともに変化するので、衝撃音を除いて瞬間値を図るのではなく、等価騒音レベルを測定する。言い換えれば、等価騒音レベルとは変動している騒音レベルを一定時間内の平均値として表した値といえる。
人間が聴くことができる高さの音は、おおよそ20~20,000Hzであるが、周波数によって
音のエネルギーと音が聴こえる大きさが異なる。様々な高さの音を人間にとっての聴こえ方で音圧レベルを補正することをA特性による補正といい、一般にdB(A)と表す。
*騒音レベルによる許容基準では、許容騒音レベルは85dB
騒音は、人にとってうるさいと感じる音のことであり、大きな音ではなくても、不協和音、高音、作業と関係のない話し声などは騒音になりやすい。逆に、作業効率を上げる目的で、音楽や鳥の鳴き声などを聴かせることが効果的な場合もある。
オ SDSの活用
危険有害の種類、区分によって図3-2のような標章(絵表示)が必要となる。
カ リスク低減措置の検討及び実施
リスクに見積もりによるリスク低減の優先度が決定すると、その優先度に従ってリスク低減措置の検討を行う。図3-6 リスク低減措置の検討及び実施
3 作業環境管理
ア 健康障害の発生経路
発散し有害物質は、作業環境中に拡散しばく露した労働者の体内に侵入する。有害物質が人体内に吸収される経路としては、呼吸器、皮膚、消火器等があるが、作業環境ではこのうち呼吸器を通って吸収されるものが最も多い。
労働者の体内に吸収される有害物質の量は、作業中に労働者が接触する有害物質の量に比例すると考えられ、これを有害物質に対するばく露量という。ばく露量は、労働時間が長いほど、環境空気中の有害物質濃度が高いほど大きくなる。
図5-1有害物質による健康障害の発生経路と防止対策
イ 作業環境測定の意義
作業環境測定の目的は、測定により定量化して評価を加え、問題があれば労働者の健康障害を防ぐための対策を講じることである。
ウ 作業環境測定の方法
① デザイン
作業環境測定を行うには、測定の対象、単位作業場所の範囲、A測定・B測定の実施方法、測定実施の日時等について検討し、具体的な内容を決定する。
A 表5-2(安衛法第65条の規定により作業環境測定を行うべき作業場)のうち、
・土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場
・第1類若しくは第2類の特定化学物質を製造し、又は取り扱う屋内作業場
・一定の鉛業務を行う屋内作業場
・有機溶剤を製造し、又は取扱う屋内作業場
これらの測定は、作業環境測定士又は作業環境測定機関が行わなければならない。
また、「酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場」の測定は、酸素欠乏危険作業主任者に行わせることになっている。
それ以外の作業場では、一般に衛生管理者が行うことが多い。
B 単位作業場所
単位作業場所とは、労働者の作業中の行動範囲と有害物質の濃度等の分布状態等を考慮して、作業環境測定が必要される範囲をいう。
C A測定とB測定
A測定は、単位作業場所全体の有害物質の濃度の平均的な分布をしるための測定である。
B測定は、作業者が発散源にごく近いところで作業する場合や、間欠的に大量の有害物質を発散させる作業がある場合のように、A測定の結果だけでは、作業者がさらされる危険のある高い濃度を見逃す恐れのある場合に、単位作業場所の有害物の発散源に近接した作業位置における最高濃度を知るために行う測定である。
D 測定の方法
A測定は、単位作業場所のほぼ中央を原点とし、縦横6m以内ごとに等間隔に線を引き、原則としてその交点の床上50cm以上150cm(騒音の場合は120cm以上~150cm以下)の位置を測定点とする。測定点の数は、単位作業場所について5点以上とし、20~30点を目安とする。
B測定は、作業者が発散源に近接して作業する場合などに、その作業位置で作業環境空気中の濃度が最も高くなると考えられる時間帯に行う。
作業環境測定は、このA測定とB測定(測定する必要のある作業がある場合)を行い、評価はこれらの測定結果をもとに行う。
② サンプリング
サンプリングとは、作業環境空気中の有害物質を試料空気として採取することをいう。サンプリングは作業が定常的に行われている時間帯に行い、各々の測定点における試料空気の採取時間は10分程度以上の継続した時間とする。
③ 分析
採取した試料の分析方法は、作業環境測定基準に従って分析する。分析法は、
・粉じんについては、重量分析方法又は相対濃度指示方法
・鉱物粉じん中の遊離けい酸は、エックス線回析方法又は重量分析方法
・石綿は、計数方法
・特定化学物質・鉛・有機溶剤は、物質の種類に応じ吸光光度分析方法、蛍光光度分析法、原子吸光分析法、ガスクロマトグラフ分析方法
等が定められている。
エ 作業環境測定結果の評価
測定結果は、「管理濃度」を指標として評価する。
「管理濃度」とは、有害物質に関する作業環境の状態を評価するために、作業環境測定基準に従って単位作業場所について実施した測定結果から、当該単位作業場所の作業環境管理の良否を判断する際の管理区分を決定するための指標であり、日本産業衛生学会が勧告している許容濃度などを参考にして定められているものである。
「管理濃度」は、作業環境管理の目的に沿うように設定されたもので、個々の労働者のばく露濃度との対比を前提として設定されている許容濃度などとは異なることに注意しなければならない。
評価は、単位作業場所ごとに行う。また、1つの単位作業場所で数種類の物質を取り扱う場合には、それぞれの物質について評価を行い、物質ごとに管理区分を決定する。ただし、有機溶剤については、人体に与える影響が類似しているため、2種類以上の通気溶剤を含有する混合物にあっては、測定点ごとに次式により計算して得た換算値を測定点とみなして評価を行う。この場合は管理濃度に相当する値は1である。
C=C₁/E₁+C₂/E₂+・・・・
表5-5作業環測定の結果の評価と管理区分
オ 管理区分に応じて講ずべき措置
有機規則、特化規則、鉛規則による作業環境測定の結果、第2又は第3管理区分となった作業場所については、作業環境の評価結果、作業環境を改善するために行う措置等を、作業場の見やすいばしょに掲示する等により周知し、第3管理区分であった場合には、作業環境を改善するための措置を講じた後の作業環境測定の結果についても周知しなければならない。
カ 有害物質に係る作業環境の改善の手法
有害物質に関する作業環境改善には、次の方法がある。
① 有害物質の製造・使用の中止、有害性の少ない物質への転換
② 生産工程、作業方法の改良による有害物質の発散の防止
③ 有害物質を取り扱う設備等の密閉化と自動化
④ 有害物質を取り扱う生産工程の隔離と遠隔操作の採用」
⑤ 局所排気装置の設置又はプッシュプル型排気装置の設置
⑥ 全体換気装置の設置
⑦ 作業行動、作業方法、作業工程の改善による発散の防止
特に、生産工程、作業方法の改良では、
㋐ 粉じんの発生が問題となる場合には、生産工程を見直し、作業性や品質に悪影響がなければ湿式や与湿する方法を採用する。
㋑ 有機溶剤を使用する塗装方法を、有害性の低い粉体塗装、水性塗料の塗装に変える。また、エアーでスプレーしていた噴霧塗装をエアレススプレーにする。
㋒ 粉末状で受け入れていた原材料をペレット状、スラリー状、ウエットケーキ状、顆粒状に変更し発散量を減らす。
また、有害物質の発散源を密閉化することができない場合には、発散した有害物質が労働者の呼吸位置まで拡散しないようにする必要がある。これには局所排気装置の設置が有効であり、有害物の発散源ごとにフードを設けて補足、吸引して労働者が有害物質にばく露されないようにする。
キ 局所排気装置
① 基本的な構造
□ フード
発生する有害物をできるだけ発散源の近くで高濃度のまま補足するための吸気口であり、いかに発散源の近くで、発散源を囲うように作業に支障をきたさないように設置するのが大きなポイントである。
□ ダクト
ダクトの断面は円形(ダクトの断面が長方形のものはコーナー部の抵抗が大きい。)がよく、ダクトの長さはできるだけ短く、曲がり(ベンド)部分をできるだけ少なくするように配管する。また、主ダクトと枝ダクトとの合流角度は45°を超えないようにする。
□ フードの分類(表5-8)
囲い式 :発生源のまわりを囲み、隙間、観察口、小作業孔が吸気口となり、最も大きなフード効果のあるもの
外付け式:作業の性質上、囲い式、ブース式によりがたいとき、やむをえず発散源に独立して設けられるもので、外部の乱れ気流により効果が大きく滅札される。
② フードの型式
□ 囲い式フード
囲い式フードには発散源がフードにほぼ完全に囲い込まれていて、隙間程度の開口部しかないものにカバー型及びグローブボックス型があり、発散源はフードに囲い込まれているが、作業の都合上、囲いの1面が開口しているものに、ドラフトチャンバ型及び建設ブース型がある。
これらは、開口面に吸い込み気流を与えて、囲ったフードの内側で発散した有害物質が開口部から外へ漏れないようにするものである。
□ 外付け式フード
外付け式フードとは、囲い式のフードとすることができず、やむを得ず有害物質の発散源の近くに設置するフードをいう。外付けフードは発散源の近くで発散源から発生する有害物質を吸い込み気流によりフードまで吸引するものである。
このため囲い式フードと比較して、余分な空気を吸い込まねばならず、吸引風量を大きくする必要がある。また、できるだけフードを発散源に近づけて設置し、フランジを付けるなどしてフード効果を高める必要がある。
□ フードの中で排気効果は、囲い式が最も大きい。囲い式フードの排気効果の大き さは、カバー型及びグローブボックス型、ドラフトチェンバ型、建築ブース型の順である。
外付け式フードの場合は、側方や下方吸引型の方が上方吸引型のものより一般的に有効である。熱による上昇気流がある場合には、上方吸引型が有効な場合がある。フード開口面の周囲にフランジを付けることにより、フランジがないときに比べ、少ない肺風量で所要の効果を上げることができる。
③ 囲い式フードの排風量
囲い式フードの排風量(Q)[m³/min]は次の式で計算する。
Q=60[s/min]×開口面積(A)[m²]×制御風速(Vc)[m/s]×補正計数(K)
排風量(Q)を一定とすると、開口面積(A)を小さくすれば制御風速(Vc)が大きくなることが分かる。つまり、できるだけ開口面を小さくすれば、フードの吸引能力も小さくできる。
④ 空気清浄装置
表5-11各除じん装置の扱える粉じんの粒径分布の例によると、「粉じんの粒径(単位μm)」が「5未満」の除じん方式は、ろ過除じん方式及び電気除じん方式である。
ク 物理的因子に係る作業環境の管理
① 振動対策
□ 振動工具の選定基準と点検整備・保守点検
使用する工具は振動ができる限り少ないものを選び、工具のメーカー等が取扱説明書等で示した時期及び方法により定期的に点検整備し、常に最良の状態に保つようにする。また、「振動工具管理責任者」を選定し、点検・整備状況を定期的に確認し、その状況を記録する。
□ 作業時間の管理
振動業務とそれ以外の業務を組み合わせて、振動業務に従事しない日を設けるよう努める。また、使用する工具の「周波数補正振動加速度実効値の3軸合計値」を工具にある表示や取扱説明書等により把握する。
更には、使用する工具及び業務に応じて、一連続の振動ばく露時間の制限又は一連続作業後の休止時間を設ける。
□ 工具の操作方法及び作業方法
工具の操作方法については、ハンドル等以外の部分は持たない、また、ハンドル等は軽く握り、かつ、強く押さえないなど余分な振動のばく露を避ける。
② 非電離放射線・電離放射線の対策
非電離放射線である紫外線、赤外線などのばく露を低減させる作業環境の改善策として次のような手法がある。
㋐ 発生源を遮へい
㋑ 発生源から労働者を隔離
㋒ 有害交戦の吸収
ケ 一般作業環境の改善
① 事務所の必要換気量
作業室内において、衛生上、入れ換える必要のある空気の量を「必要換気量」といい、1時間に交換される空気量で表す。
必要換気量を算出するには、通常、次の式を用いる。
室内にいる人が1時間に呼出する二酸化炭素(m³/h)
必要換気量(m³/h)=
(室内二酸化炭素基準濃度)-(外気の二酸化炭素濃度)
② 採光と照明の点検
作業室の明るさについては、次のような条件が必要である。
□ 十分に明るいこと
□ 明るさにムラがないこと
□ まぶしさがないこと
□ 適当に影があること
□ 光の色が太陽光線に近いこと
□ 照度を得るためには、窓からの採光と人工照明を併用する
Ⅲ 労働衛生工学に関する知識(作業管理に関する基礎知識)
1 労働衛生保護具
図6-5 呼吸用具の種類
表6-14 防毒マスク吸収缶の種類及び色
表6-15防毒マスクの使用区分
Ⅲ 局所排気設計
1 全体排気
ア 換気量と濃度の関係
希釈に必要な換気量を決めるために、全体換気をしながら有害物質を発散させる作業を続けた場合に、濃度がどのように変化するかについて考える。条件として、⓵作業を始めるときは濃度はゼロ、⓶作業中は有害物質の発散量は変わらない。⓷有害物質はすべて十分に拡散して室内の空気と混合し、また、④給気された清浄な空気は室内の汚れた空気と完全に混合した後に排気されるものと仮定する。
50×24.45×有害物質の発散量(W)[g/h]
排気量(Q)[m³/min]=
3×分子量(M)×濃度(C)[ppm]
イ 温度差を利用した全体換気
温度差換気が効果的に行われるためには、
① 建屋の高さが十分高いこと
② 上下の開口面積が十分広いこと
③ 温度差を保つために必要な熱の発生があること
2 局所排気とは
ア 局所排気のメカニズム
わが国では有機規則、特化規則などの厚生労働省令で局所排気装置の構造要件と性能要件が定められており、この要件を満たさないと法的には局所排気装置と認められません。
イ 局所排気の計画と設計の手順
① フードを設置する場所と、フードの形を考えます。
② 制御風速を決めます。
③ 必要排風量を計算します。
④ 必要排風量の合計が大きすぎて空調に差し支える場合やクリーンルームのクリーン度が影響される場合には、もう一度フードの位置と形を検討しなおして、排風量を減らす努力をします。
⑤ ダクトの太さを仮決めします。
⑥ ダクトの配置、設置する場所を決めます。
⑦ ダクトの太さが太すぎて配置に差し支える場合には、その部分だけ細くすることもやむを得ませんが、搬送速度、圧力損失が大きくなりすぎる場合には扁平角形、オーバル形等の異形ダクトを使って搬送速度が5~6m/s位に収まるようにします。
⑧ 搬送速度を計算します。
⑨ 空気清浄装置を選定します。
⑩ ダクト系の圧損を計算し、ファンの必要静圧を求めます。
⑪ 必要排風量の合計と必要静圧からファンを選定し、回転数などの動作点を決めます。
また、次の点に留意する必要があります。
・ フードの形、大きさ、吸込み方向は発散源の形、大きさ、周囲の状況、汚染物の性質、発散方向、発散速度を考慮して決める。
・ 作業者の呼吸がフードに吸引される汚染気流の中に入らないように配置する。
3 局所排気フードについての基礎知識
ア 囲い式と外付け式
基本設計の段階で一番苦労するのはフードの計画です。フードの計画を立てる場合に囲い式が最も効果がよいので、できるだけ囲い式にすべきである。
イ フードはなぜ囲い式がよいか
優雅愛物質の発散源がフードの囲いの外側にある外付け式フードの場合には、フードに向かって吸い込まれる気流と向きの違う気流(乱れ気流)があると有害物質は乱れ気流に押し流されてフードに入らなくなってしまいます。
囲い式フードの場合にはたとえ横から乱れ気流が当たってもフードの側面が防ぎとめてくれるので、発散源には影響がありません。
ウ フードの型式分類
レシーバー式のキャノピー型は、発散源の上方に天蓋のように吊るされた自立型フード。熱浮力による上昇気流を伴う発散源に用いるが、作業者が開口の下に顔を入れて汚れた空気を呼吸しやすいので、有害物に応用するときには特に注意が必要です。
エ フードに流れ込む気流の性質
フードの吸込み気流の速度は、開口面の直径(長方形の場合は短辺の長さ)だけ離れると約1/10に下がってしまうといわれています。すなわち開口の直径が0.5mの円型フードなら、開口面上の吸引風速が10(m/s)あっても、開口から0.5m離れたところでは、1(m/s)の風速しか得られないということです。外付け式フードを発散源のなるべく近くに設けないと効果が得られないのは、このためです。
オ フードの基本計画
囲い式の場合でも、なるべく開口は小さくした方が少ない吸引風量で十分なコントロールができ経済的です。どうしても加工ことができないで外付け式を計画する場合には、フード開口面を発散源にできるだけ近づけるように計画しなくてはなりません。できれば発散源の一部でもフード開口面の内側に入るように設けてください。
よいフードとはできるだけ少ない排風量で有害物質を全部吸引できるフードのことで、そのためにはできるだけ発散源を囲い、完全に囲えない場合には一部でも囲い、まったく囲えない場合はできるだけこじんまりしたフードを、開口面をできるだけ発散源に近づけて設けるべきです。
■ 免許申請までの手続き
1 試験(択一試験)
①11/13(水) 職業性疾病(25分)
②11/15(金) 労働衛生工学(50分)
2 修了証
11月25日に令和元年11月11日~15日開催「衛生工学衛生管理者」の修了証が送付されてきました。
3 免許申請
12月上旬に修了証を添付して免許申請書を北海道労働局労働基準部安全課・健康課免許担当に持参しました。申請書の裏面に収入印紙1,500円を貼付。
4免許証
令和2年1月10日付で衛生工学衛生管理者免許が交付されました。
